海を航る詩

外洋ヨットで海を航く悲喜こもごもの詩を朗読(映像つき)

リギン鳴る夕暮れ


リギン鳴る夕暮れ

秋の宵、デッキでぼんやりお酒を飲む。      

暑かった今年の夏、夢のように過ぎ去った冒険を思い出し

頬を撫でる風がすでに冷たいことに少し寂しさを感じながら  

黄昏色に染まる空の下でほんのり酔う。 

さっきまで船の修理をしていたヨット乗りたちもポツポツと帰ってゆく。

船としばしの別れを惜しむかのように 舫いを確かめたり、

何度も振り返り船への愛しさをにじませながらゲートの向こうへ消えてゆく。

夏の喧騒が去ったマリーナの夕暮れ すれ違うヨット乗りたち。   

考える時間は ここには充分ある。 

自由であることの感慨が湧き上がり 心は風に乗って見果てぬ海の彼方へ旅立つ。

かけがえのない時間を噛み締め船を降りる時、やはり私も振り返り見る。

一緒に走ってきた、そして、これからも共に行く私の船よ。