海を航る詩

外洋ヨットで海を航く悲喜こもごもの詩を朗読(映像つき)

希望の船


  

輝く朝

蒼い月の夜

波は打ち寄せては砕け

時は瞬く間に今を通り過ぎ過去になる

 

いつも大切なものは目に見えず

触れることもできず形もなくそこにある

だからもう欲しくもないものを追いかけるのはやめて

今この瞬間の心のままに自分のための時間を使おう

そんな時の積み重ねが孤独に打ち勝つ心を支えてくれる

 

進む道は間違っていない

輝く陽の光の中を行く

この船は希望そのもの

たとえ海が荒れても

なんとか折り合いをつけて前へ進もう

勇気と誇りをもって

MONOLOGUE〜その名儚く

船を去る人を何度も見送ってきた。

「そのとき」が来たら、何を思うのだろう。

私はまだ、しばらくふらふら彷徨っていそうだけど・・・


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【MONOLOGUE〜その名儚く】

シューティングスター、一瞬の流れ星

キラキラと光り輝いたら流れ落ちて終わってもいい

そう思ってたあの頃 燃え尽きて、

ただの石ころになっても

心に永遠の安らぎを見つけることが出来たなら

そっと、この人生を祝福しよう

 

熱狂の日々は戻らないけど

喜びも悲しみも呑み込み 果てなく広がる海に

心も溶ける穏やかな時間

 

今、もう何も願わず、待つこともなく

わけもなく溢れる涙もそのままに、    

いい夢を見た・・・

空高く手を伸ばし静かに微笑めば     

海面を風が吹き渡り、

美しい光が私を包む

新しい朝を追いかけて


新しい朝を追いかけて

 

海を見ながら考える。                  

私に出来るちいさな冒険を。               

マークもフニッシュラインもない、               

何を目指すか自分で決める、この挑戦に言い訳は効かない。    

荒天突破、トラブルシューティング

困難ばかりじゃないけれど

間違いないのは安心してると必ず何かがやって来るということ。   

海を見ながら考える。                      

今度は何に出会うのだろう。                  

生きる楽しみは「未知の世界」に出会う胸のときめき!

同じ空の下、同じ海の上なのに新しい世界を感じるのは 

走り続けて来た今だから。            

眠れない長く暗い夜の暁、最初の光が厳かに空を染めたら

ここは私の楽園。

 

Memento Mori 〜ヨットで命を落とした仲間への鎮魂歌

Memento Mori


海に出よう

底深い紺青の世界に怖気付き、

逆巻く波に奮い立つも 生まれる前ここにいたような懐かしさを感じる海。  

    

「板子一枚下は地獄」と船乗りは言う。

この下は、落ちたら生きて戻ることは容易でない底深い海

運命は予測しがたく災難は誰にも降り掛かる。 

海に消えた命を思う胸の痛みは、声にもならずまとわり付く。

二度とこの陽の光浴び海を駆けることが叶わない人を思い 

鎮魂の祈りを口にするけど 重過ぎる現実に言葉は砕け散る。

 

ただひっそりと、この「喪失」を背負って行こう、罪の如くに。  

元には戻らない傷口を固く押さえ、

それでも今また呟く

海に出よう。 

【Long Version】


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It is Sunday today~白いセールは光の中


It is Sunday today~白いセールは光の中

 

It is Sunday today~白いセールは光の中

 

今日は日曜、白いセールと海を散歩

 

北西の風が強い日々だったのが

今日はいつになく穏やか

春霞たなびく海は暖かだけど

テルテールはしょんぼりしてる                

かすかな風を探して、あちこちふらふら

時折の南風に戯れては、波のまにまに漂う

 

そうだ、大島を回ったら島かげでアンカリングしようか

頭を空っぽにして、煌めく海をずっと眺めていよう   

柔らかな波は大きな手のように

優しく船を揺すりまどろみを誘う

 猫のように気ままにに過ごす昼下がり

 

今日は日曜、白いセールは光の中

 

解き放つ呪文は知らなくても 

心に抱くは自由を目指す羅針盤

冬の光の中で ICY COLD WORLD


冬の光の中で ICY COLD WORLD

「身を切るような」とか「凍るような」という表現がある。

冬の海には現実の寒さとは別の 死の予感を孕む冷たさがある。

寒さが恐怖に変る瞬間、危険が擦り寄る

万全の準備で海に出るのはいつもながら、さらに用心を重ね臨む。

 

風は重くても安定している。

波はかぶりたくないけど、それならそれでアドレナリン全開。

「落水したら助からないか・・・」

挑戦は快感か恐怖か、自問するけど結局わからない。

 

厚い雲の下、寂しくも威厳ある冬の海に圧倒される瞬間。

憂いは波に洗われ大海に流れ落ちる。

今、ただ生きるため、命を燃やすためだけにここにいる。

違う人生を生きていい、つかの間この海の上。

 

冬の海は一度嵌るとやめられない。

リギン鳴る夕暮れ


リギン鳴る夕暮れ

秋の宵、デッキでぼんやりお酒を飲む。      

暑かった今年の夏、夢のように過ぎ去った冒険を思い出し

頬を撫でる風がすでに冷たいことに少し寂しさを感じながら  

黄昏色に染まる空の下でほんのり酔う。 

さっきまで船の修理をしていたヨット乗りたちもポツポツと帰ってゆく。

船としばしの別れを惜しむかのように 舫いを確かめたり、

何度も振り返り船への愛しさをにじませながらゲートの向こうへ消えてゆく。

夏の喧騒が去ったマリーナの夕暮れ すれ違うヨット乗りたち。   

考える時間は ここには充分ある。 

自由であることの感慨が湧き上がり 心は風に乗って見果てぬ海の彼方へ旅立つ。

かけがえのない時間を噛み締め船を降りる時、やはり私も振り返り見る。

一緒に走ってきた、そして、これからも共に行く私の船よ。