海を航る詩

外洋ヨットで海を航く悲喜こもごもの詩を朗読(映像つき)

梅雨の海


梅雨の海


挨拶の常套句で “うっとおしい季節” といわれる梅雨。

洗濯物は乾かないし、傘は荷物になるし・・・

でも6月、「雨の匂いのする海」に心惹かれる海の仲間は少なくない。

そぼ降る雨のなか、船を出す時のときの「切ないような胸のときめき」は遠い記憶の感傷なのか・・・。


雨具の後片付けを厭わなければ、薄い日差しは心地よく、

しっとりとした空気に包まれ波に揺られる気分は格別。

風が止まったり、セールが濡れて重くなるのは困るけど、

灰色の空に 心は妙に落ち着き、懐かしい気持ちなる。


そういえば大人になって「雨に打たれる」なんてことも無くなった。

小学生の頃は、迎えを待つのがもどかしく雨の中をずぶ濡れになって帰り 

よく叱られたものだ。

いつの頃から雨に濡れるのを不快に感じるようになったのか・・・。

 

年齢とともに体力の衰えを感じるなか、雨でも、風でも波でも・・・

身をさらして気持ちいいと思える時間はあとどのくらいあるのか。

雨の匂いに郷愁を感じるこのごろ。

 

ちなみに雨の匂いについて調べると、雨の降る前の匂いはペトリコール、

雨が降った後の匂いはジオスミンという物質の匂いで、

それぞれ「石のエッセンス」、「大地の匂い」という意味の言葉だそうだ。

いずれも土に纏わるもので、雨の空気を海の匂いと結びつけていたのは

やはり何か子どもの頃の思い出があるのかもしれない。