海を航る詩

外洋ヨットで海を航く悲喜こもごもの詩を朗読(映像つき)

私の時間

「私の時間」

 

海で過ぎる時間は陸のそれとは別物。

 「時は金なり」

と常に労働時間の短縮が課せられ

大人になった私たちは意味ある時を過ごし

齢を重ねてきたと思っている。

思い起こすことはあるだろうか・・・

時をお金に変える社会で生きながら

お金を時に変えることはできない、

その不可逆性について。


人は必ず死ぬ。

生命は、時の流れと同じ 後戻りしない。

目的意識を持って積み上げた時間にだけ意味はあるのか?

思い出は尊く美しいけど、

生きている今この瞬間こそが歓喜

積み重なる時間とは別の、ただ流れ過ぎていく時間がある。

人は何かのために生きているのではない、

ただそこにあるだけと考えると心が軽くなる。

 

力を尽くし立ち向かっても、

決して抗えないものもある。

運命とか漠然としたものでなく、

海にあればどうしようもない自然のいたずらに

遭遇してしまうことがある。

乗り越えられないものもある、

なんて学校では教えてくれなかったけど、

なすすべもなく ただ身を委ねるしかないこともある。

 

そんなことを畏れ、覚悟し 

「波間に漂う瞬間」が連なった時間。

何か起こるかも知れないけど、

何も起こらないよう手を尽くして

ただ海と空を眺めるだけの時間。

海の上で過ぎる時間はただ流れ過ぎ、

私はそこで時間を浪費する。

意味のないもうひとつの贅沢な時間。

 


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