海を航る詩

外洋ヨットで海を航く悲喜こもごもの詩を朗読(映像つき)

サンセットクルーズ


サンセットクルーズ


セールを揚げてシートを引いて風をつかんだら、

サンセットクルーズ!走り出そう、水平線の彼方めがけ

お日様が海に飲み込まれ今日の終わりが近づく

明日もきっと会えるのに、まるで今生の別れのように赤々と燃えてサヨナラを告げる

 

長い一日もあれば短い一日の時もあった

どんな時も、お日様は必ず生まれ変わり再生の朝が来る

今は人生の一コマ

サンセットクルーズを楽しもう

風のキスを浴びて潮の香りを纏って、ずっと走り続けたい

孤独で静謐な時間が人生に豊穣をもたらす 

ひとり波音に耳を傾けるとき、忘れていた本当に大切な何かがキラリと光る

                                         

お日様にまたね、と乾杯!

今日が明日を決める

風の中、全身で信じよう、お日様のように限りなく生まれ変われると

お気に入りのお酒に希望の泡が立ちのぼり、グラスの向こうに情熱の色が輝く

 

サンセットクルーズ

夏の夕方の魔法の時間、人生の一瞬

梅雨の海


梅雨の海


挨拶の常套句で “うっとおしい季節” といわれる梅雨。

洗濯物は乾かないし、傘は荷物になるし・・・

でも6月、「雨の匂いのする海」に心惹かれる海の仲間は少なくない。

そぼ降る雨のなか、船を出す時のときの「切ないような胸のときめき」は遠い記憶の感傷なのか・・・。


雨具の後片付けを厭わなければ、薄い日差しは心地よく、

しっとりとした空気に包まれ波に揺られる気分は格別。

風が止まったり、セールが濡れて重くなるのは困るけど、

灰色の空に 心は妙に落ち着き、懐かしい気持ちなる。


そういえば大人になって「雨に打たれる」なんてことも無くなった。

小学生の頃は、迎えを待つのがもどかしく雨の中をずぶ濡れになって帰り 

よく叱られたものだ。

いつの頃から雨に濡れるのを不快に感じるようになったのか・・・。

 

年齢とともに体力の衰えを感じるなか、雨でも、風でも波でも・・・

身をさらして気持ちいいと思える時間はあとどのくらいあるのか。

雨の匂いに郷愁を感じるこのごろ。

 

ちなみに雨の匂いについて調べると、雨の降る前の匂いはペトリコール、

雨が降った後の匂いはジオスミンという物質の匂いで、

それぞれ「石のエッセンス」、「大地の匂い」という意味の言葉だそうだ。

いずれも土に纏わるもので、雨の空気を海の匂いと結びつけていたのは

やはり何か子どもの頃の思い出があるのかもしれない。 

私の時間

「私の時間」

 

海で過ぎる時間は陸のそれとは別物。

 「時は金なり」

と常に労働時間の短縮が課せられ

大人になった私たちは意味ある時を過ごし

齢を重ねてきたと思っている。

思い起こすことはあるだろうか・・・

時をお金に変える社会で生きながら

お金を時に変えることはできない、

その不可逆性について。


人は必ず死ぬ。

生命は、時の流れと同じ 後戻りしない。

目的意識を持って積み上げた時間にだけ意味はあるのか?

思い出は尊く美しいけど、

生きている今この瞬間こそが歓喜

積み重なる時間とは別の、ただ流れ過ぎていく時間がある。

人は何かのために生きているのではない、

ただそこにあるだけと考えると心が軽くなる。

 

力を尽くし立ち向かっても、

決して抗えないものもある。

運命とか漠然としたものでなく、

海にあればどうしようもない自然のいたずらに

遭遇してしまうことがある。

乗り越えられないものもある、

なんて学校では教えてくれなかったけど、

なすすべもなく ただ身を委ねるしかないこともある。

 

そんなことを畏れ、覚悟し 

「波間に漂う瞬間」が連なった時間。

何か起こるかも知れないけど、

何も起こらないよう手を尽くして

ただ海と空を眺めるだけの時間。

海の上で過ぎる時間はただ流れ過ぎ、

私はそこで時間を浪費する。

意味のないもうひとつの贅沢な時間。

 


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マストが星を連れて行く

「マストが星を連れて行く」

 


水平線に 今、夕日が近づいたと思ったら

あっという間にもう夜の帳が下りる

さっきまで向こうで待っていた月がくっきり浮きあがる


眠気覚ましは用意した!

向かう先に闇が大きな口を開けている

新しい世界へ踏み込むように目を凝らす


夜光虫はキラキラ夢の花道 

月が雲の間に隠れると星たちが騒ぎ出す

先人たちも見ていたであろうか同じ星空を

本能を研ぎ澄ます夜空と波の音

降り注ぐ流星

ためしに願い事を祈ってみよう


頭上でマストが星たちを連れて行く


遠く前方に緑の灯、赤い灯       

どんな船が何を載せて行くのだろう

どこから来てどこへ行くのか

姿も見えない灯火だけの景色

 

夜間航行、旅路はまだ続く。


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